第119話 失ってわかるありがたさ |
その時、ずっと揚げ場に入っていたのが“阪大8回生”唐木君です。
しばらくホール業務に専念していた彼は、今後のスタッフ育成のことも考えてなのでしょう、
積極的に揚げ場に入り、考えを持って仕事をしているように私からは見えました。
揚げ場から見たホールと、ホールから見た揚げ場はまったく違ってきます。
ホールに慣れたからこそ、改めて揚げ場を実践しようという意図を感じたので、
私は何も言わずやってもらいました。
が、その二日間は連続で一人ですべてをこなすにはきつすぎたようです。
月曜日の朝に彼からメールが届きました。
「右手が動きません・・・」
しかし、その日は私は大切なお客様をお迎えする日。
代わってあげられるのは早くても8時以降です。
とりあえずは店の行きつけにしている接骨院に行ってもらい、診てもらいました。
が、かなり重度の腱鞘炎とのこと。
店に帰ってきた彼の右手はギプスでガチガチに固められていました・・・
自分を責めるので、
「俺と同じで、もう揚げ場には入ったらあかんということがわかったやん」
といって笑い飛ばしました。
それからしばらくは接骨院の先生の指示通りに絶対安静のため休みを取ってもらいました。
働きづめの彼にとっても、きっと必要な休みだったのでしょう。
彼が入社するまでは、私は午前中にプールに行って、帰ってからブログを更新、
昼を食べてから、2時ごろに店に着きます。
そこから銀行や買い出しなどに行き、開店準備と包丁を使わなくてもいい仕込みをします。
それを終わると大体3時半過ぎ。
血流の関係でとても疲れやすいため、しばらく休憩も兼ねて、電話の着信チェックなどをします。
そしてパソコンで集計業務を始めるともう4時半近くになります。
5時前には早出のスタッフが出社して来ますので、結局ゆっくりと考える時間はほとんどなし、
というのが今まででした。
それが彼が店に入るようになってからずいぶんとリズムが変わりました。
彼はいつも夕方4時にきて、シャッター開けから、仕込みまでの開店準備と、
店の徹底したクリンリネスをすべて任せています。
その間、私はまったく自由です。
本当にいろいろなことが一気に進みました。
小さなことから大きなことまで、ゆとりを持って行うことができます。
2時に会社にきて銀行に行きさえすれば、疲れることもなく、ずっとゆとりの時間です。
こんなにありがたいことはありません。
約4時間のフリータイムは何にもましてありがたいものです。
そんなリズムに慣れてきて、やってくれるのが当たり前と感じるようになった矢先の怪我。
私自身が風邪気味であることもありますが、やりたいことが計画通りにできなくなるものです。
当たり前のように、やってくれること。
失ってみて、そのありがたさが身に染みました。
とにかく早く怪我を治してくださいね。
よろしく!!!!!