第115話 ごはんのおかわりを有料にしました |
当店で使用する食材も揚げ油をはじめとして、
いわゆる穀類を使っているものは値上げの波にさらされています。
当然のことですが、それは原価に大きく影響を与えます。
しかし、最終消費者と常に向き合っているサービス業、小売業は
なかなか値上げに踏み切れないものです。
特に私どものような小さな店、まだまだ導入期の店にとっては、
値上げというのは最終手段と考えざるを得ません。
しかし手をこまねいてみている訳ではありません。
お客様の動きを見ながら、少しでも出来ることを考える必要があります。
そのひとつがごはんのおかわり有料化でした。
そもそも私は店をはじめる前から、ごはん、キャベツ、味噌汁までおかわり自由が当たり前と
思われている、とんかつ店独特の常識が不思議で仕方がありませんでした。
ファミレスでも中華料理店でも和食店でもごはんはもちろん、サラダやスープは有料です。
なぜ、とんかつ店だけ?
そこで再オープンしてからおかわり自由制をやめました。
そのかわり、最高に美味しい米を、最高に美味しい状態で炊き、ぴかぴかつやつやの状態で
提供すると決めました。
量ではなく質で価値を伝えようという考えです。
またそれを理解して、それを求めるお客様に来ていただきたいという考えでもあります。
おかげさまでその戦略はひとまずあたりました。
おかわりを言われるお客様の比率は10~15%程度です。
ほとんどのお客様が、ごはんの配分を考えながらお食べになられます。
それでもあくまでもサービスとしてメニューには一切表記をしないまま、
1回だけおかわりを受けていました。
おかわりができると知った時のお客様の嬉しそうな表情といったら、
サービスをしている人間としてたまらない喜びです。
そうして、お客様と喜びを分かち合っていました。
しかしながら、おかげさまで店の評判が広がり、客層も様々になってきました。
最近では高校生くらいのとても若いお客様も増えてきました。
彼らにとってとんかつ店の常識であるおかわりを、
とんかつを一切れも食べないうちに言ってくるようになりました。
おかわり一杯無料を表記していないとはいえ実施している以上、当然受けます。
さも当然の顔で受け取る彼らに「次のおかわりからは1杯250円になります」と伝えると、
不満そうな顔をして途端に大事に食べ始めます。
そうしてお互いに喜びを分かち合えない状態が発生し始めました。
おかわりを1回できることを知らないお客様もいらっしゃいます。
さらには女性やお年寄りなどそもそもおかわりは不要なお客様もいらっしゃいます。
自分の商売がお客様に対して随分不公平になっていることに気づきました。
肉は大きさが変わると値段が変わります。
私にとってのごはんは決して添え物ではなく、
とんかつと同等にお客様に自信を持って提供している商品です。
商売として商品をぞんざいに扱い、お客様に不公平感を与えているとすれば問題です。
そういったこともあり、また食材の値上げの波にもあわせて、
11月1日よりごはんのおかわりの有料化に踏み切りました。
値段は標準200円、少なめ100円、多め300円。
全てのテーブルにご案内POPをつけました。
その結果、今までよりもおかわりの件数そのものが増えました。
予想外でした。
原因としてはやはりおかわりができることを知らなかったというのが一番です。
さらに2,000円の単価に対して100円~200円のプラスなら、
満足を優先していただけるということです。
お客様にごはんを価値のあるものとしてとらえていただけることにも嬉しさを感じます。
ますますごはんを美味しい状態で出さねば!という気持ちになれます。
昨日はおかわりの売上だけでとんかつ2人前を超える売上になりました。
常識をまず疑い、
自分のやっていることに常に問題意識を持ち、
お客様の真の要望を見いだし、
自分にできることを思い切ってやってみる。
ダメならさらに深く考えて行動するのみです。
そうした実践を繰り返していくことでしか、強い店になる方法はありません。
私のような店には立ち止まっている暇も余裕もないということですね。