第111話 スーパー学生スタッフ“ほっしゃん”から学んだこと~その2~ |
しかし、これだけ素晴らしい人材でも、私との関係は良好ではありませんでした。
第8話を書いた時には気づいてなかったことです。
私は“肩書き”だけで、彼に大いなる期待を勝手にしました。
しかし星山君はほんの半年前まで四国の田舎でのんびり過ごす高校生でした。
実質、初めての仕事。
しかも何より本分は大学生です。
星山君にとっては勝手に期待されても関係のない話です・・・
しかし私はそのことに気づかず、ダイヤの原石を磨いてやる~と息巻いていました。
「お前やったらここまでできるはずやろ。ちゃんとやれや!」
「お前は仕事をなめてるからいつまでたっても上達せえへんねん!」
「星山ぁ!お前ええ加減にせえよ!何べん同じこといわせんねん!ふざけんな!」
営業中にこんな罵倒されるのは何人もいるスタッフの中で星山君ひとりです。
一緒に入っていた同じ年のスタッフが「あそこまで言わなくてもいいんじゃないですか」と
苦言を呈すほどでした。
ただし私は星山君が憎くてやっているのではなく、あくまで星山君を鍛えようと必死でした。
星山君にとってはめちゃめちゃきつかったと思います。
軽い気持ちで入ったアルバイト。
しかし、ここまでやることなすことコケ下ろされて、しかも人格にまで介入してくる。
そんな状態でお互いの信頼関係が気づけるはずがありません。
それでも星山君はちゃんと喰らいついてきました。
実力がみるみるうちについてきます。
数ヶ月するとほぼ私の期待に近い状態になり、私は星山君を信頼するようになりました。
しかし私は星山君からの信頼は得られませんでした。
その後、続々と入った新人アルバイトは、学生アルバイトできっちり仕事をこなし、
私の信頼を得ている星山君を頼りにします。
星山君は店に対して大きな影響力を持ち始めました。
そんな星山君が長期休みなどのルールを、嘘やごまかしで破るようになりました。
それでも私は認めました。
しかしそれを見ていたほかのスタッフも同じようなことを始めました。
そんな私が星山君から学んだ一番大切なこと。
それは怒鳴ったり人格にまで介入するには、相手を十分に受容しないといけないという事です。
期待をしてそれに応えさせようとするのは操作です。
操作というのはヒトとしてではなく、モノとして相手を見ているということです。
ヒトとして受容した上で、お互いに信頼関係を築き上げてから、お互いに上達を目指すということを理解しあった上でじゃないとやってはいけないということです。
ヒトとして受容するには愛情が必要です。
私には愛情が明らかに欠如していました。
愛情もなく、モノとして操作された星山君が、私に信頼や好意を持てるはずがありません。
“鏡の法則”です。
このことに気づいたのは9月の上旬でした。
それ以来、私は自分のあやまちに気づき、とにかくスタッフに対して愛情をたっぷり注ごうと決め、自分なりに努力をしてきました。
そんな折、私の体調が一時悪くなり、星山君に「もしもの時は残ってくれないか?」とダメ元で
たずねたら、星山君の返事は思いがけず「いいですよ」と二つ返事でした。
その後、検査の結果異常がないことがわかり、2人で話をした時に星山君は私に
「最近の小林さんって良いですよね」と言ってくれました。
遅ればせながらではありますが、星山君との信頼関係がはじめてできました。
経営者としてもっとも大切なものを気づかせてくれた星山君には本当に感謝しています。
もちろんその働きぶりも素晴らしかったし、仕事に取り組む姿勢も素晴らしかった。
「いろいろな仕事を経験してみたい」というのも星山君のホンネと思います。
どんどん経験して、そこで大いに勉強して、最後にもう一度とんかつ豊かに戻ってきてくれ。
学生ばかりでこれだけ真剣にお客様のことを考えて、自分の店として行動する店というのは、
他にはないよ。
その礎を築いたのは、星山君あなた自身だ。
いつでも待っているのでよろしく!