コンサルタント会社を経て、とんかつ豊かを起業した飲食マーケッター小林孝志のブログ

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第48話 日曜の朝に行列が・・・
家の近所に喫茶店があります。
喫茶店というよりもコーヒー専門店。
北大阪を中心に12店舗ほどチェーン展開している店です。

いつも行く店は55席ほどで、交通量が少ない生活道路に面しています。
近くにスーパーやコンビニなどもあるので絶対的な立地は決して悪くないのですが、
喫茶店としては良い立地とは決して言えません。


価格はコーヒーが1杯420円~です。
全く安くありません、というより高めの設定です。



しかしながら、この店はいつ行っても満席です。
平日も土日も朝も昼も夜も、いつだって満席です。
休日は席待ちのお客様でごった返していることもしょっちゅうです。



人気のポイントは、まず圧倒的な品揃えです。
レギュラーコーヒーだけで約30アイテム。
全ては生豆からの自家焙煎で、オーガニックについてもこだわりを持っています。
それら全てのコーヒーについて詳しい解説がありますし、味の説明をグラフで示してあります。
行くたびに「今日は何にしようかな?」と長い時間悩みますし、注文し終わった後でもメニューを
ずっと眺めて「次回はこれにしてみようかな・・・」なんて考えていたくなります。
そしてその時間が実に楽しいのです。


コーヒー以外にもコーヒーアレンジ品(コーヒーゼリーやコーヒーシェーク等)が10アイテム以上。
他には最近置き始めたオーガニック紅茶やオーガニックジュースなどが25アイテムほど。
軽食はローストビーフサンドやホットドッグ、ジャムトーストなど20アイテム、
さらにショーケースに入った本格的なケーキは20アイテム以上・・・
どれも実にまともで決して安くありません。


この店では、コーヒーを中心にして、軽食もデザートも、もちろんコーヒーだけでも
めいっぱい楽しめる状態になっています。



席はとてもゆったりとしています。
喫煙席の10人掛けの大テーブルや4人掛けのテーブルはアンティーク調でまとめられています。
禁煙席ではモダンイメージのテーブルセットになっていて、どれも座り心地が良くて、長時間座っていられる上等の椅子を使っています。



雑誌は旅行や料理、外国車、ファッションに関するハイセンスなものばかりで、いわゆる週刊誌はありません。
主たる客層の会話にアクセントを加えることができるような話題が載っているものを選んでいるのが手に取るように分かります。



コーヒーは個性的なカップに入れられてきますが、かなり種類があるようで、どのテーブルを見ても同じものひとつとしてありません。
先日行った時の私のカップは「ビートルズがやってくる。ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のジャケットを
デザインしたカップでした。家内のカップはフランス風のシックなデザインのものでした。

堅苦しくなく、しかし上品さを見失わないとても上手なセレクトです。



私は日常コーヒーを飲む習慣は全くありませんし、出かけた先で喫茶店に入ってコーヒーを飲むこともまずありません。
でもこの店にはいつも行きたくなります。
それはコーヒーを飲みたくて行くのではなく、妻と2人でのんびりと過ごすために行くのです。

この店に行くと、私は妻とのんびり過ごせます。
大体はコーヒーを2カップ頼み、ケーキかサンドイッチを食べるので2人で2,000円くらい。
滞在時間は1時間ほど。
雑誌を見たりしながら、ずっと会話をしています。
時には旅行の計画を練るのにわざわざ利用したりします。
家にいるとテレビを見たり、新聞を見たり、家事をやったりとなかなかゆっくり会話をすることはないのですが、この店に行くといくらでも話ができます。3時間近くいたこともあります。


なぜそうなるのか、詳しいことは分かりませんが、席のサイズ、隣のテーブルとの距離、高い天井、コーヒーの香り、程好い雑音などがとても良い具合に一体化しているからだと思います。


55席といっても4人掛けに2人というのが基本ですので、満席でも30人程度です。
それでも平均の1時間当たり売上は3.6万円というところでしょうか。
そうすると12時間の営業で45万円。
他にもコーヒー豆などの物販がありますから、50万円くらいが日商と読んでいます。
ただし、喫茶部門の粗利率は普通の飲食店に比べてかなり高いと思われます。
喫茶部門で38万の粗利、物販で3万の粗利とすれば大変な儲かり方です。



スターバックスで紙コップに入ったコーヒーを飲むのに比べてはるかに高級感があって、
ドトールコーヒーの狭い空間でタバコの煙にまみれて飲むのに比べてはるかに居心地が良い。
ファミレスのような寒い感じもなく、高級レストランにいるような堅苦しさもありません。


たかがコーヒーで席を待つのも、その後に待っているとてもゆったりとした非日常の優雅な時間を過ごせるためなら平気なのです。


そして待っているお客様の顔もイライラ感はありません。
待っている空間に置かれている売り物のコーヒーポットなど本格的なコーヒー関連アイテムに囲まれていると、まるでディズニーランドの人気アトラクションの建物の中をちょっとずつ進みながら待っているときのような感覚になれます。



このコーヒー専門店の商品というのは、実はコーヒーそのものではなく、コーヒーとともに過ごす時間であり、店は回転率などを意識せずにお客様がゆっくりと楽しい会話を過ごせるように徹していることがポイントです。

理論上の経営数値ばかりを突き詰めるのではなく、お客様の満足を最優先するからこそ、大繁盛しているんだ!

日曜日の朝10時から行列に並んでそんなことを考えました。


とんかつ豊かも食器の柄を変えることや、メニューブックでのグラフ表記など、この店から随分と
勉強させていただきました。
でも勉強のために行くのではなく、楽しみに行って、楽しかった理由を分析して、その気付いたことの実践しているだけです。

とんかつ豊かもとんかつを食べるためだけではなく、とんかつとともに過ごす時間を売りにしていきたい・・・そんな風に思いながら日々、お客様と商品との関係を模索中です。
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by tonkatsuyutaka | 2007-08-07 08:03
第47話 不自然体
7月の終わりに新メンバーが加わりました。
国立の大学生で飲食店でのアルバイト経験も豊富です。
やる気もあるし、技術も知識もあります。

そんな彼がお客様を見送る際に言う「ありがとうございました」の言い方が変なのです。
発声も変だし、言い回しもイントネーションも変。
とても造られた「ありがとうございました」なのです。


入社初日から気になっていましたが、しばらくは作業を覚えるのに集中させるため指摘はしませんでした。
しかし1週間が経ち、作業も目処が立ち、本人に対する今後の期待も伝えた後で気になっていた「ありがとうございました」の話をしました。


本人はビックリしていました。
そもそも自分がどんな風にいっているかも分からない、と言います。
試しに言わせてみるととても自然な「ありがとう」を言います。
訓練されて、何度も何度も言っているうちに無意識で言ってしまっているので、
意識して言おうとしても言えないのです。


おそらく以前に勤めていた飲食店ではその「ありがとう」が良かったのだと思います。
しかしとんかつ豊かには合っていません。
私のおもてなしのコンセプトは“自然体”です。
彼のとても上手な、しかしとても不自然な「ありがとう」は、決して間違っているのではなく、
合っていないのです。




「お前のその笑顔は不自然なんさ!今すぐやめろ」
今から9年前、船井総研に入社した初日に挨拶にいった上司の宮内亨氏に言われた第一声は
これでした。
「よろしくお願いします」と頭を下げた次の瞬間です。


学生アルバイト時代から含めて12年間にわたって家電量販店で勤務した結果、身についた笑顔と言い回し。自分では結構なレベルだと思っていました。
それがホンネ一筋の宮内氏にはどうにも気に入らないようでした。


自分にないものを造り出すと不自然になります。
でもそれも使い慣れると身についてしまいます。
しかしそれは不自然なので随所でボロが出ます。
本当に自然な笑顔ならいかなる場合も崩れないでしょうが、宮内氏の思いもよらぬ一喝で完全に彷徨える笑顔になったのは自分でも分かりました。


その後もことあるごとに指摘されつづけていくうちに、3年もすると随分と緩和されました。
今ではすっかり消えてなくなったと思います。



自分にないものを造るというのは、第一印象で好印象を与えるためにやる場合が多いです。
つまり自分の本質を隠さねばならないのだと思います。
もちろん常識のレベルで礼儀正しいのは必要ですが、度を越す不自然なものには違和感を
感じます。
なにかあるのかな・・・?と。


以前、お世話になったある経営者もそうでした。
お辞儀の仕方や腰の低さ、物腰の柔らかさ、気遣いぶりから、その方に会ったほとんどの人は
「なんて素晴らしい人なんだ」と思われます。
私もそんな1人でした。
しかし、残念ながら本質は全く違いました。

そこに気付いてからの関係は不自然そのものです。
そしてようやくその呪縛から解放されました。
そこから学んだことはとても大きいですし、ありがたいことです。



その経営者が不自然であることが悪いのではなく、それを見抜けなかった私が悪いのです。
なぜなら私も不自然だったからです。
経営者になって、病気をしたり、売上が伸びずにもがき苦しんでいるうちに、自然体になっているのだと思います。
そうなるととても楽です。
自分や相手の地位とか立場とかそんなのは一切関係なく、素直になれるのです。



同じ過ちを自分がしてはいけないし、部下にもさせたくありません。
私が笑顔1つから変えたように、スタッフの「ありがとうございました」から変えて、
無理のない自然体の企業体質を作りたいと思います。
そうして店名通りに店に関わる人みんなが豊かになれれば最高です。
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by tonkatsuyutaka | 2007-08-06 11:37
第46話 若い時の体験は人生の何よりの勉強
第8話に書いたアルバイトスタッフが辞めることになりました。

7月は試験で後半全休、8月はお盆を法事だからと8日間もぶち抜きで休み、9月は合宿で免許を取るので20日まで全休。
そのまま9月いっぱいで辞めさせて欲しいと言ってきました。
辞める理由は10月からの授業に少しゆとりができるので、昼から働ける仕事をしてもっと稼ぎたいのと、今のうちにもっといろいろな仕事を体験しておきたいから、だと言います。

さすがにこれには怒り爆発!

小林「お前の勝手のせいでみんな盆休みもろくに取ってないんや。自分の都合が良いようにシフト
を入れて、自由になったら辞めますではあまりにも無責任。そんなの絶対に認めない」

学生「人が育つまで辞める機会を待っていましたが、キリがないので辞めます」

小林「人が育つまでやと・・・?お前は傍観してただけやんけ。辞めたいなら代わりを作ってから
辞めろ。ひとごとにして逃げるな!」

学生「わかりました。では10月いっぱいまでいます。その間にちゃんと育てます。」

小林「じゃ9月中に2人くらい入れるからお前が責任を持って育てろ。募集のポスティングも自分で
やるんや。いいな」

学生「はい。分かりました」



私は辞めることについて怒ってはいません。
話があると言ってきた時点でこの話になることもわかっていました。
彼は店で2番目の古株です。ちょうど1年になろうとしています。
頭脳は明晰で仕事もできるのに、リーダーシップを一切発揮しない。
責任から逃れようとしていることがありありなことに怒っています。


きっと大きな組織の店なら学生アルバイトがそこまでする必要はないと思います。
お気楽に遊び感覚でできるアルバイトはいくらでもあるでしょう。
しかし、仕事というのは責任を持つことです。
お客様から見れば対応した人が店そのものです。

せっかくとんかつ豊かに入ったのだから、社会に出て即通用する人間になって欲しい。
社会のルールをきちんと教えるのも経営者としての仕事だと思います。



その日、営業が終わって彼と飲みました。
そこで伝えたのは、
いろいろ勉強するなら次は飲食以外の大きな会社がやっている小売り業に行くといい。
ヤマダ電機とか。
そこで大企業の考え方を学んで来い。でもそこも6ヶ月で辞めて、同じような規模の違う業種で仕事してみ。スーパーでもいいし。
君の性格は大企業のルールの中で生きていく方が向いていると思う。今、学生である権利をひけらかすように。
でも部や課のレベルになれば大企業も中小零細企業も同じ。5000人の会社でも自分が配属されて一緒に仕事をするメンバーは5~6人になる。そこはこの店と同じようにトップの仕事に対する考えひとつで変わる。
学生のうちにやりたい仕事を見つけるのではなく、仕事とは、組織とは、こういうものだということを知っておくことが大切。
君が抜けることは店にとって大変な痛手だが、その勉強をするためなら仕方がない。
とにかく学生アルバイトと思わずに真剣にやってこい。

それと学校の勉強よりも遊ぶことにも真剣に打ち込め。
それこそ学生の特権だ。
同じ事をやっても20歳の学生の時と40歳の経営者になってからでは変わる。
合宿で免許を取ったらすぐに車を買え!
免許を取るためだけの勉強なんかするな。
車なんて20万もあればカッコいい車は買える。古いけど・・・
後は維持費を稼ぐために頑張ってアルバイトで稼げ。
君はモテたいと思ってるから、そのための行動を起こせ。
やってみれば10年後に分かる。
学生時代にお金を貯める必要はない。
お金を稼いで、お金を使って、お金のありがたさを知ることが本当の経済学だ。



私も学生時代、アルバイトを通して本当の勉強をしました。
大学のマーケティング概論の講義よりも、真剣にワープロを売ることから学んだことが多いです。
真剣にやったからもあるし、ちょうどバブル期だったのもあってずいぶん稼ぎました。
そのお金でいっぱい遊んだし、車もずっと乗り回していました。
その時の体験が今の生活とても役立っています。

自分がいいと思った経験を、学生スタッフにも学んでもらいたい。
若い今だからこそ、自由がきく今だからこそ、できることです。



彼がいくつかの仕事を経験して、一回り大きくなったら、
またとんかつ豊かで一緒に働いて欲しいと思っています。
待ってますよ。
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by tonkatsuyutaka | 2007-08-05 09:44
第45話 とんかつ豊か 昨対200%の秘訣 ~その1~
ブログも40話を超えると、更新がなかなか難しくなってきます。
毎日色々なことを感じて学びつつも、いざ文章にしてみると以前に書いた事とほぼ同じ内容になってしまう・・・ニュアンスは微妙に違うのですが。
文章を書くことの難しさを体感しています。
1年間サボらなかった「佐藤勝人の経営一刀両断」はやはりスゴイ。


そこで、新ネタが出ない時は自分のやってきたことを遡行してまとめなおそうと考えました。
毎日、書きつづけることに再挑戦です。




昨年3月に5ヶ月のブランクの後に再オープンしたとんかつ豊か。
オープン当初は本当に苦しみました。
しかし何もせずにただ耐えていたわけではありません。
数少ないお客様を見ながら、繁盛店を食べ歩きしながら、そこから感じ、気付き、学んだことを
一つ一つカタチにして、ありとあらゆる手を打っては変え、やっては直し、を繰り返してきました。

何か1つの手法が大成功したのではなく、小さなことが渾然一体となってうまくいくようになったと理解しています。
それこそがとんかつ豊からしさなのだと思います。

それを自分なりにまとめることは次の一手につながるはず。
そう思い、シリーズ化していこうと思います。



その第1弾として紹介したいのが「とんかつ豊かを楽しむ極意」という冊子です。

当店のとんかつはかなり個性的です。
ゆえにその説明をメニューブックで短くまとめようとすると、実に読みづらくなります。
それならば、と思い切って言いたいことを全部伝える冊子にしました。
目次はこんな感じです。

1.「塩とんかつ誕生秘話?!」
2.「豊かのとんかつは蒸し料理?!」
3.「豊かのとんかつは出るのが遅い」
4.「もっとも美味しい食べ方は?!」
5.「とんかつの脇役だって主役級?!」
6.「関西一高価なとんかつ?!」
7.「ちょっと役立つ?!とんかつトリビア」
8.「なるトモ!出演ドタバタ記」
9.「食器もちょっとこだわってます・・・」
10.「せやねん!に出ました、が?!」
11.「この味噌汁はなに?!」
12.「あまから手帖で大騒動?!①」
13.「お客様名言集?!」

1項目2~4ページ構成で合計30ページのシステム手帳サイズの冊子です。


表現方法に工夫をして、面白おかしく読みやすくしています。
初めてこの冊子を見た友人には「こんなに分厚いの、誰が読むねん!」と言われましたが、
実際には80%以上のお客様が読みます。


1人で来店された方はいい暇つぶしを見つけた!という感じで読まれます。
カップルで来られたお客様は仲良く頭を寄せ合いながら読んでくれています。
グループで来られた方は代表して朗読している人がいます。


『ロースはまず右から2番目から食べてみて下さい』と書いてあるページがあります。
ロースかつを注文した8割くらいのお客様が“右から2番目”から食べ始められます。


30ページものボリュームなので、じっくり読むととんかつが来るまでに読み終われません。
ほとんどの方は、食べ終わった後でもずっと読みつづけておられます。
それを考慮したページ構成も考えています。




なぜこんなことをはじめたのかというと、もともとオーダーが入ってから肉のカットから始めるので
提供までに最低でも15分くらいかかります。

その間に1人のお客様は腕を組んで待つか、手持ちの本を読んで待たれます。
新聞か雑誌はないかとあたりをキョロキョロする方も多くいました。
そこにチャンスを見いだしました。
この時間にとんかつ豊かの世界にどっぷり浸かってもらおう。
そのための方法です。



私もそうですが、ほとんどのお客様は「これは○○産の~」とか「○○が他と違います」というようなことを聞いて食べるほうが、何も知らずに食べるよりも期待値が高まり、美味しく感じます。

逆に食べて美味しければ「なぜ?」と知りたくなります。
食べ終わってから読み始めるお客様も少なくありません。
これも私にもいえるのですが、飲食店のスタッフに話し掛けるのは勇気が要ります。

それを代弁してくれる役割も果たしてくれています。



私は食事は楽しむものと考えています。
ビジネスマンのランチは「生理的欲求」になってしまうのは仕方がありませんが、
とんかつ豊かでの食事は「親和欲求」「自我欲求」を満たせるものにしたい。
さらに叶うものなら「自己実現欲求」をも満たしたい。


そのためにはとんかつを楽しんでいただくための品揃えや品質向上とともに、情報提供も私の大切な仕事です。
食べればわかるなんて職人みたいな考えではなく、
「また来たい!」「あの人を連れてきたい!」という気にさせる仕掛けが必ず要るのです。
まるで、ディズニーランドのように。



「ええか、右から2番目から食うんやぞ。そこが一番旨いからや!なんもつけんと食べろよ」
20歳台の若い部下を引き連れた40歳台の男性の誇らしげな顔を見て、少しディズニーランドに近づけたような気になれました。
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by tonkatsuyutaka | 2007-08-04 11:12
第44話 権威だってここまでやるのだ
今、私がもっとも恐れるものは体調が悪くなることです。
売上が伸びないとかという恐怖とは全く別次元のものです。

今からちょうど2年前、私は激しい頭痛で2ヶ月ほど苦しみました。
それでもオープンした直後なので病院に行く暇など全くなく、ずっと我慢をして耐えました。
しかしそれがもとで悪化して、国立循環器病センターに半年入院して4度の手術を受けました。
店はその間も3ヶ月ほど営業したものの、いわゆる“閉めておいた方が良かった”という状態に陥りました。


昨年の3月に再オープンしたものの、ちょうど同じくらいの時期にその病気が元で体調を崩し、入院か自宅での絶対安静かを迫られ、お盆直前に急遽4日間店を閉めました。


私にとって体調は経営に直結しています。
よく「命がけで経営」と口先で言う経営者はいらっしゃいますが、私の場合はマジで命がけの
実践者なのです。


だからほんの些細なことでも少しでもおかしいと思ったら、すぐに主治医に電話をします。
我慢に我慢を重ねて死にかけた経験があるからです。


ところが先日から、もっとも恐れる頭痛が起きました。
たぶん、普通の人なら頭痛薬でも飲んで寝てれば治ると思うでしょうが、何度も言うように私にとっては命がけです。
すぐに国立循環器病センター脳血管外科の主治医に電話をして症状を説明しました。
その医師の外来診察日が翌日の木曜日だったのでその時に診てもらうつもりでした。
ところがその医師は「今からこちらに来ることは可能ですか?小林さんの店の昼営業が終わってからでいいですから、とにかく来て見せて下さい」と言われました。


相手は国立病院の医師です。
それも循環器の分野においては日本の権威とも言えるスペシャリストです。
特にこの医師の外来予約は1ヶ月先まで予約でいっぱいです。
それを外来診察日でもないのに、また頭痛が起こって2日しか経っていない患者に対して、相手の不安を考慮してくれるのです。しかも外来を担当しているということはすごい数の患者と関わっています。それなのに一患者の職業についてまで考慮してくれるのです。


病院に行って待っていると
「小林さん。大変お待たせしました。どうぞ診察室に入ってお待ち下さい」
と最高の笑顔で招き入れてくれました。


何度も言いますが相手は国立病院の医師です。
普通はマイクで「小林さん。7番診察室まで」と呼び出されるのが普通です。




入院中、私は病名が判明し、処置するごとに色んな科を移りましたが、
とりわけ脳血管外科の対応は全然違いました。
それはトップである脳血管外科部長の考え方と行動が違うからだと思います。
「白い巨塔」というドラマの中で教授の総回診という場面がありました。教授がたくさんの部下を従えて週1回程度で病棟を回り、表面的に患者と接して自分の力を見せつけるというシーンです。
循環器病センターも週に1度、部長回診という名で同じようなことをやっていました。
他の科では、一度も診てもらったことがない部長先生が来て、カルテをパパっとチェックして、担当主治医に指示をしていました。なかなか不思議な光景です。

脳血管外科でも部長回診があります。ところがこの部長は毎朝8時前に、1人で全てのベッドの患者に「おはようございます。お具合はいかがですか?」とまるで看護士のように接してきます。
時にはお年寄りの世間話にもとても気さくに付き合っておられました。

国立病院の脳外科部長が全く偉そうぶらずに患者に接する。
そのトップの行動が素晴らしい対応をする医師を作り上げているのです。



診察では血液検査の結果とCTの画像を見て、病気の再発の心配は全くないことを具体的に分かりやすく説明してくれました。そして「頭痛を我慢することで新たな頭痛のタネになるので、少しでも痛いと思ったら今から処方する薬を飲んでください」といってくれました。


医師だって1つの商品です。
その本来的機能価値は「病気を治すこと」だと思っていましたが、私のように基本的に治らない
病気の患者にとっては「親身に関わって相手の不安を取り除く」ことだと感じました。



この医師は帰り際に「また少しでも変なことがあったらとにかく電話をして下さい。できる限りの対応をしますから」といつもように言われましたが、まさにその実践をされたわけです。



サービスとはただ笑顔で接したり、ハキハキと喋ることではなく、お客様の要望を察して、それに対応することの大切さをあらためて感じました。
とんかつ店ならお客様の好みの揚げ具合や塩コショウの具合を前もって察知して調理すること。
ご飯の量や味噌汁の具材などにも好みを反映させること。
そしてそれをするためにも、お客様の顔と名前と好みを一致させるメモを作ることから始めなきゃなぁ・・・と思います。



ところで会計窓口で患者様アンケートを渡されました。
へぇ~国立病院でもお客様の満足度アンケートなんかやるんだ、と思って内容を読むと、

・診察に不満がある(大いにそうだ そうだ どちらでもない そうでもない 全くそうでもない)
・医師の態度が悪い(大いにそうだ そうだ どちらでもない そうでもない 全くそうでもない)
というような逆説的アンケートの羅列。


私の印象は決して「診察に不満があることは、全くそうではない」でも、
「医師の態度が悪いことは、全くそうではない」でもありません。

「診察の分かりやすさと安心感に大満足!」であり、
「医師の態度も対応も最高に素晴らしい!」なのです。



ねぇ、国立循環器病センターの事務局の皆さん。

ちゃんと普通に誉めさせてよ。
なんで誉めたいのに大袈裟に二重否定をしないといけないのよ・・・

あんたらは欧米か?!
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by tonkatsuyutaka | 2007-08-01 13:15