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コンサルタント会社を経て、とんかつ豊かを起業した飲食マーケッター小林孝志のブログ

第77話 人のフリ見て・・・
明日の予算達成飲み会を、昨日書いたスタッフの送別会に急遽変更しました。
彼にそれをメールで伝え、出席しますというメールを読みながら、
5年前のある経営者との出会いを思い出しました。



船井総研の時に名古屋のある専門店で1年間仕事をしました。
月に1度訪問して8時間ほどのスタッフ勉強会を仕切っていました。
POPの書き方や手配りチラシのつくり方、売上計画の立て方から粗利計算まで・・・
全スタッフ約40名を入れ替えで2日間かけて研修をしました。
その会社は当時9店舗あり、社長は当時45歳くらいのエネルギーに満ち溢れている人でした。



経営の勉強もしっかりしておられて、経営者らしい雰囲気を持っています。
スタッフ教育にも熱心です。
船井総研にお金を払い、交通費とホテル代を払い、スタッフの時給も全部払っている。
人件費だけでも20万円を超えますから、総額では50万円以上の金額になります。



これだけ聴くと、とても従業員教育に熱心で素晴らしい企業のように思えます。



しかし現場での実情は違います。
社員は2名であとはパート・アルバイト。
少ない人数をギリギリで人を回しての運営。
そのしわ寄せがスタッフに重くのしかかります。
それがプレッシャーになるのか、人が次々に辞めていきます。
私が研修している間の1年間で、残っていたのは10名程度。
あとはその都度入れ替わっていきます。



社長からもそのことについて相談を受けたので、全員と個別面談をすることにしました。
すると出てくるのはやはり社長に対する批判。

言っている事とやっていることが違う。
辞めた人の悪口を言うのでつらい。
一部の人だけえこひいきしている。
お客様の前で怒鳴り倒す。
提出物が多すぎて家に帰っても何時間も仕事をしている。
出した提出物に対しての反応が全くない。


具体的に出てきた社長に対する指摘でした。
これらは私の立場だから聞き出せたことであって、面と向かってはいえることではありません。

「私が言ったって絶対に言わないで下さいね。お願いします」
それが社長批判をした人たち誰もが最後に付け加えた言葉です。


長くいるスタッフは社長の素晴らしいところが見えていますが、経験の浅いスタッフには全く見えていません。
それどころか、まず新人スタッフに先輩から伝えられるのは社長の悪口です。


数年前に同じような会議をした翌日に、全員が店を一斉に辞めたこともあったそうです。
なぜそんな風になるのだろう・・・
まだ訪問して数回の私にはわかりませんでした。



しかし、その研修中に私の質問に答えないスタッフがいました。
何故答えないのかをしつこくたずねていると、その24歳の男性は突然「もう辞めます」といって
荷物をまとめて会場から出て行ってしまいました。


そのとき同席していた社長は、彼を止めることなくそのまま帰してしまいました。
そして休憩の時に社長は私に対して
「あんなに追い込んだのは先生のせいです。この後始末をきちんと付けてください」
と言いました。
私はその研修のあと、1人で彼の店まで行って事情を聞きました。


すると彼の口から出たのは
「あの場であぁやれば辞められると思ったんです。小林先生には迷惑をかけたと思います。
でもあの社長は嫌です。それにどうして小林さんが来て、社長は来ないのですか?
その時点でおかしいじゃないですか!」




社長は研修の時に何度かスタッフを誉めていましたが、私には心がまるでこもっていないように感じました。
怒る時はとても感情的で手がつけられない、嵐が過ぎるのを待ったほうがいい、そんな感じです。


ある時に台風が直撃して新幹線が止まりそうな日がありました。
「どうも危なそうなので今日の研修は休憩時間を短くして、1時間繰り上げることはできませんか?帰れないと明日の仕事に影響が出ますので」とお願いしました。
しかし社長の答えは
「そんなものはお互い様です。あなたの明日の仕事は私の知ったことではありません」
でした。
案の定、新幹線は止まりましたが、近鉄電車が何とか動いていたので5時間立ってようやく家路に着きました。




今回の件で、私も同じようなことになりました。
相手のことを少し思いやれば、
相手の立場に立てれば、
そして愛情を持って接すれば、
こんなことにはならないと思います。


あるいはこれは会社規模が小さくても経営者の宿命なのかもしれません。
経営者とスタッフでははなから立場が違います。
それはどうにもならないのかもしれません。
しかしどうにもならないと嘆いてばかりいても前には進めない。
その立場の違いを自分なりに受容して、そのうえでどうしたいか!どうするか!です。



経営者をやっていると自分が裸の王様なのではないかと思ってしまう時もあります。


人のフリ見て我がフリ直せ。
そのために日々勉強しています。
by tonkatsuyutaka | 2007-09-12 12:17
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