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コンサルタント会社を経て、とんかつ豊かを起業した飲食マーケッター小林孝志のブログ

第40話 行こか、戻ろか・・・
よく登山家が「引き返す勇気」と言います。
せっかくここまで来たんだから登っちゃえ!という気持ちを抑えることが命を守るそうです。
でもその決断をするためのデータ収集能力と、その集めたデータと経験を掛け合わせる決断力というのは凄いものだと容易に想像ができます。


経営とは山登りににているのかもしれません。
といっても私は山登りの経験はありませんから、あくまでもテレビや映画を見て勝手に感じていることです。



先日ある経営者から電話をいただきました。

今の状態を続けるべきか、いっそのこと業態変換をするべきか、大いに悩んでます。
もう2年半になる新しい業態の店舗運営だが、一向に利益が出ない。
人任せにした過剰すぎる設備投資でそのリース代を支払うのがやっとの状態。
それでも今年の春から仕入先を変更したのでかなり改善したものの、別の商品が値上げになるという通告が来たので、どうしたものかと思っています、とのことでした。


私は聞きました。
10年先にまだその業態の店をやっていたいのですか?

その答えは
「今いるスタッフのために残してあげたい」でした。


経営とはキレイ事ではありません。
ボランティアでもありません。
莫大な利益が何十年にもわたって出続けて、社会に還元したいというのなら大いに結構です。
でも自分がしんどい時にそんなことを言う必要も、考える隙さえも不要です。


夢や希望は大いに結構です。
でもまずは現状をとことん分析して、それを全て受容することです。
きちんと経営して、きちんと給与を支払って、きちんと借金を返して、きちんと税金を納める。
まずはそれができないとちゃんとした経営ではありません。
私の店もまだ全然ちゃんとした経営状態ではありません。


だからわかるのです。


まず経営者が働いていて楽しくないと、スタッフだってついてきません。
自分自身が大きな夢を持って、その風船にスタッフをぶら下げてさらに上昇できるための
圧倒的な推進力が必要です。
たださえも大きな穴がいっぱい空いた沈みゆくボートに乗れといわれても、
ましてやそのボートをあげるなんていわれても、スタッフにとってはありがた迷惑です。



自分が笑顔でいられるから、スタッフも笑顔になり、お客様を笑顔にすることができます。
やりたかったことと得意なことがずれていただけです。
でも今の設備を使って、さらに別の業態に変えて、得意な業態につなげる事はできます。



この道のまま先には行くべきではない。
でも完全に下山する必要もない。
天候の情報を見て、自分の体調を考えて、目指す場所と装備を変えて出発すればいいのです。


この業態を引っ張った隊長はもういません。
2年半、現場で悪戦苦闘してきたからできる判断力と決断力が求められています。



どんなことがあっても死んではいけません。
死にかけているなら生き残る可能性が高そうな道を探せばいいのです。



私の店も入院してから「行こか戻ろか」の繰り返しです。
そして少しづつ行き先を修正しながら、何よりも自分の体調を最優先にして
一歩づつ一歩づつ、ゆっくりゆっくりと進んでいます。


お昼に営業したら売上は一気に1.5倍になって経営状態は楽になります。
でもしません。
それをして再度入院するようなことになったら終わるからです。



他人にいくら言われても、自分の経営は自分が一番知っています。
自分の経営を貫くしか生きられません。
それをやってダメなら諦めるしかありません。


船井総研時代に「行きましょ!行きましょ!」と無責任にけしかけた自分自身の反省もこめて、
そして経営者として苦しい経験を積んでいく中で、
目先ではなく大きなビジョンを持つことの重要性を知りました。


そしてそれはまず他人ではなく自分と家族の幸せじゃないといけないのです。
by tonkatsuyutaka | 2007-07-25 07:10
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