第17話 和歌山の風雲児 山添利也社長の真髄 |
5年前に開業したイタリアレストランは連日の大行列が続き、
2年前に開業したケーキ店の一番商品であるチーズケーキはあの楽天市場で全商品の中で売上1位を記録するなど、ノリにノッている真っ最中。
そのチーズケーキは噂が噂を呼び、テレビ、雑誌の取材が殺到。
ついにはあの東京日本橋の三越百貨店に招待され、特設売り場でまたも大行列。
百貨店の売上ピークになる夕方には売り切ってしまい、三越のバイヤーも驚いてその場で追加の招待が決まったそうです。
そんな弱冠32歳の経営者山添利也氏は、1年半だけ在籍した船井総研時代に
私と一緒に仕事をする機会が多かったため、私はいまだに兄貴分として振舞っています。
今月初めに電話で話す機会があり、新しい事業を模索しているというので会うことになりました。
乗っていた電車で人身事故がおき、30分遅刻で現れた彼と、予定通りさまざまな繁盛店を巡店。
この店の年商はいくらだろうか、一番商品はなんだろう、誰に売るのか、そして自分達が経営者なら何をするか、そのようなことを考えながら店内を見回して商品POPやショップカードやらをチェック・チェック・チェック。
そして車で移動しながら、議論して自分達の商売にリンクさせていきます。
新しい事業に思いを馳せながら、議論は尽きることなく続きます。
お互いに自分とは違う見解を展開するので、ひとりで見て回るよりも何倍も勉強になりました。
そして彼の話を聴きながら分かったこと。
それは彼が経営者というよりも根っからの商売人であるということ。
そしてそんな彼を支えるのが幼なじみの馬締博和専務。
ひたすら前だけを見てパワフルに突っ走る社長を、
見事なまでの手綱裁きでコントロールする名前通りの男。
そんな彼の存在こそが事業を支えていることがわかりました。
経営者と商売人。
中小零細企業においてはほとんど一致しているもの。
しかし和歌山の元気企業はすでにその役割がはっきりと分かれている。
”調子に乗りすぎず、臆病になり過ぎない。”
事業を行う上で、もっとも重要な矛盾を、
もっとも信頼しあっている人と議論して決めていくことができる。
ひとりでこの作業を行うことがもっとも難しい・・・
だから経営コンサルタントという仕事がある、ということも身を持って知ることが出来ました。
私はその姿に経営者としてうらやましさを覚えながらも、
この企業の底知れぬ成長力の真髄を垣間見ました。
とんかつを食べながら二人でワインを2本あけてさらに話をする中で、
私は彼のコンサルタントとして責任を持って
「お前は100億を目指せ!」
といいました。
イタリアレストラン開業当時、全く売上が伸びずコンサルティングを依頼してきたときに
私は
「最低でも年商1億を目指せ!」
といいました。
現状の5倍もの数字を聞いて、一瞬キョトンとしながらも2年後にはそれを軽くクリアしました。
「100億」と聴いた彼はその時と同じ顔をしていました。
だから間違いなく達成すると思います。
以前のように人馬一体に過ぎなかった会社も
いまやたくさんのスタッフが乗った大きな馬車を引っ張っています。
二人の夢だけではなく、スタッフ全員の夢をいっしょに運んでいるという
責任感と使命感がこの会社の原動力になる。
とんかつ豊かも早く彼の会社のようにしよう!
そんなことを思いながら、明日二日酔いにならないことを願って眠りにつきました。
そのころ山添社長は乗っていた電車がまたも事故に遭い、2時間遅れで駅に着きました。
そして私は予想通り史上最悪の二日酔いになりました・・・