第10話 良い商品を作ることと、売込みをすることは、同じくらい大切なこと |
とても物静かで真面目そうな若い職人さんがオーナーのお店です。
ドイツ仕込みの本格的な技術。
厳選された素材。
研究熱心であることがすぐに分かる豊富な品揃え。
そしてなんと言ってもハム・ソーセージに対する真剣な取り組み。
それらがとても良く伝わり、とても好感の持てるお店です。
店の研究用に6種類5000円分ほどの商品を買い、早速試食をしました。
そのどれもが本当に美味しいのです。
モモハムは肉の食感がほどよく、香辛料などは極力使わずに肉の味そのものを活かしています。
ロースハムは脂身部分が口に入れるとスーっととろけるようで、まるでイベリコ生ハムのようです。
肩ロースのペッパーハムはうっすらとついたペッパーがとても鮮烈でインパクトのある味です。
他にレバーパテやベーコンも購入しましたが、どれも絶品です。
ぜひ、おすすめしたいハム専門店です。
と、ここで終わるとただの食通ブログです。
飲食マーケッターとしては気になることが満載でした。
まず、売り場から「売りたい」とか「買って欲しい」という気持ちが伝わらないのです。
ここまで美味しい商品です。
値段もちょっぴり高めですが、商品価値を考えたらとても妥当です。
であればもっと「売る」ことに力を入れるべきです。
「売り込みは苦手なんで・・・」という職人さんは多いです。
でも、苦手なのではなく、「売ること」「売り込むこと」が、まるで邪道のように考え、
ひたすら良いものを作って、売れるのを待つという考えを持った人が多いです。
しかし、いくら作っても売れなければ世の中に存在しないのも同じ事。
世の中にはあまり良い商品じゃなくても売れる商品はいくらでもあります。
いやむしろむしろその方が多いかもしれません。
商品が良くないから一生懸命に売り込む。
その結果売れる商品になり、売れたおかげで商品が少しずつ良くなり、もっと売れるようになる。
本当に美味しいハムを食べたいと思っているのに、
仕方なく普通の大手メーカーが作っているハムを買って食べている。
そういう人に知らせないほうが、罪なのではないでしょうか。
大手メーカーは黙っていて大手になったのではありません。
真剣に商品を作り、お金をかけて真剣に売込みをして、
その結果、味を認められて売れたから大手になったのです。
そのかわりにハムの代金には莫大なテレビCMの放映料まで含まれています。
それこそシルベスタースタローンの億単位のギャラまで一緒に買わされているのです。
それと同等価格なら、卓越した技術と知識をもって、真剣にかつ真面目に一生懸命作った
小さなハム専門店の方がずっとずっと美味しいに決まっています。
具体的いうと、まず店の一番に売りたい商品を決めること。
そしてそれをショーケースの中でもっともっと目立たせるべきです。
店に来る人が100%その商品を買っていくようになれば、
その商品を目当てにやってくるお客様がどんどん増えます。
ランチェスターの法則でいくと、シェア26%が一番店です。
それを店内構成比ですら達成できなければ、店としての認知が難しくなります。
もし地元密着を目指さないのであれば、一番商品の構成比はもっともっと高める必要があります。
とんかつ豊かの一番商品は「豊かリッチロース」です。
先月の店内シェアは45%でした。
平日にいたっては60%を超えています。
昨年の今ごろ、全く売れずに苦しんでいた時は、どの商品もまんべんなく売れていました。
そこでランチェスターの法則にしたがって、「リッチロースかつ」を売る商品と決めて、
最低でも31%にするためにメニューブックを見直し、注文時に一声添える、
リッチロースに特別商品の追加するなど、試行錯誤を繰り返しました。
そしてはじめて28%を超えたときに、最低目標ととらえていた売上に達成していました。
売れるのを待つのではなく
売るためのありとあらゆる工夫をする。
そのためには勉強が必要なのです。
昨日はとても美味しいハムを食べさせていただきながら、
一点集中販売の大切さを実感できて、とても勉強させられました。
ごちそうさまでした!!!!!!!!